118km先を目指す人

1.何、118kmって!?

うちの相方が118kmのマラソンに参加するという。
私は「はーい」と返事するのみなのだが、よくよく考えてみたらビックリする距離である。
フルマラソンの約3倍の距離。
自分が走れと言われたらえーっ、となってしまうだろう。
しかし、すでに100kmの大会を2度完走しているうちの相方なので、特に心配もしていなかった。

そんな感じでついていくことになった、チャレンジ富士五湖ウルトラマラソン。
私はうちの相方の完走より、(車が運転できないため)自分が応援に行くのに交通の便が悪すぎるという問題を突きつけられ、あたふたと対応を余儀なくされた。
もっと交通の便が悪い京都・丹後ウルトラマラソンのほうが交通に苦労しなかったのに…。

2.猛者集結!

前日夕刻。
車に布団や枕などの就寝グッズを詰め込み、自宅を出発。
途中東名道・足柄サービスエリアで湯に浸かり、仮眠をとって、会場の山梨県富士吉田市・富士北麓公園へ。
時刻は午前2時半…にもかかわらず、車が多い。
そりゃそうだ、ここにいるのは大半が118kmの部に参加する人たちなんだからなぁ。
流石に118kmに参加する人は猛者が多そう。
うちの相方の知り合いの人にもお会いしたが…慣れてそうだなぁ。

午前4時。
パーン、と号砲が鳴り、118kmの部の人たちがスタートしていった。
これから118kmを走るとは思えないぐらいのスピードで出て行く人もいれば、ノンビリ手を振りながら走って行く人たちもいる。
そんな猛者を見送り、私はそそくさと車へ。
(あぁ、寒かった…)
というのも、気温は3度。
速攻でありったけの布団にくるまり、仮眠…体が温まらず、なかなか寝付けなかったけど。

午前4時スタート!4時半には100kmの部がスタートすることもあり、会場には多くの人が!
午前4時スタート!4時半には100kmの部がスタートすることもあり、会場には多くの人が!

3.人の暖かさと

再び起床したのは6時半。
すっかり夜は明けていたが、曇り空の富士吉田。
ムシャムシャと朝食を取り、昨晩の足柄以降ノーメイクだった自分にメイクを施し、車を出て1台のバスへと向かった。
今回は、大会の出している「応援バス」というものに乗って、いくつかのポイントでうちの相方を待つことにした。

バスに乗っていると、途中で雪の塊発見…そりゃ寒いわ
バスに乗っていると、途中で雪の塊発見…そりゃ寒いわ

最初のポイントは56km地点にある富士河口湖町の足和田出張所。
バスの道中から見える景色は河口湖はもちろん、ソメイヨシノの咲き誇る姿。
標高の高い富士五湖は、ちょうど今がソメイヨシノの見頃だったのだ。
それは想定外だったので、歓喜の私。
出張所の隣にある貴船神社(京都ではない)にも大きなソメイヨシノの木があって、まさに見頃だった。

その貴船神社の鳥居とソメイヨシノ。このころにはすっかりいい天気
その貴船神社の鳥居とソメイヨシノ。このころにはすっかりいい天気

だが。
うちの相方はすぐに来ない。
そりゃあ、相方の到着予想タイムより1時間以上早くバスは到着しているからだ。
座れそうな石垣に腰掛けて、読書の人となることに。
応援慣れしている人はキャンプ用の折りたたみ椅子やレジャーシートを持参しているところを見ると、持参すればよかった…と思わずにはいられない石垣の座りごごちの硬さ。

しばらくすると、エイドステーションにいたおじさんが何かを配り始めた。
「応援も大変でしょう」と応援待ちの人にホットレモネードとチョコレートを配ってくれたのだ。
なんと気の利くおじさん…もちろんありがたく頂戴しました。感謝!

こういうものが嬉しいんです…おじさん、感謝!!
こういうものが嬉しいんです…おじさん、感謝!!

チョコレートを舌で転がしながら、うちの相方のスマホGPSをチェック。
今回はスマホのGPSを使い、居場所を特定できるというサイトを使って応援することになっていたのだ。
たまにエラーで止まることもあるが、概ね使えている印象。
そろそろ来そうだ、というタイミングで立ち上がれるのが素晴らしいね。
うちの相方は私が到着してから1時間20分後に到達。
すでに足が痛いと言っているが…まだ半分もいってないぞ。
水を飲んでお腹に入れて、次へと歩を進める相方。
その横をすいーっと応援バスで通過する私(次のバスは10分後でラッキー)。
バスで通過した西湖の周辺は晴れ上がり、本当にソメイヨシノが見頃。
すっかり私は観光客気分…!!

うちの相方は元気そうに見えますが、すでに足が痛いと…
うちの相方は元気そうに見えますが、すでに足が痛いと…
西湖とソメイヨシノ。バスに乗っている間はすっかり観光客状態です
西湖とソメイヨシノ。バスに乗っている間はすっかり観光客状態です

4.若干観光気分で

次のチェックポイントの野鳥の森公園には15分ほどで到着。
竪穴式住居のような謎の建物があるが…野鳥が来るんだよね。
桃の花?が咲き誇り、里山的な雰囲気の場所だなぁ。
と悠長にしていたら…うちの相方来るじゃん!
ありがたいことに、次のバス発車の5分前にうちの相方がやって来た。
次のバスまで40分待つのは辛いから助かったよ〜。
再びバスに乗り、次のチェックポイントへ。

よかった〜ここで40分待ちぼうけも辛かったから、早めに来てくれてよかったと思っていた63km地点
よかった〜ここで40分待ちぼうけも辛かったから、早めに来てくれてよかったと思っていた63km地点
バスから捉えたうちの相方。うちの相方も私のこと分かったかな?
バスから捉えたうちの相方。うちの相方も私のこと分かったかな?

3つ目のチェックポイントである旧精進小学校へは15分ほどで到着。
だが、うちの相方はすぐに来る気配なし。
なぜなら、先ほどのチェックポイントから27km先という…!!
でも400mほど歩くと72km地点に出られるので、そこまで行って待つことにした。
誘導のおじちゃん達と談笑しながら待つものの、うちの相方はなかなか来ず。
後から来た応援者の人のほうが先に会えているけど…また調子が悪いのかな。

うちの相方は45分ほど経過してから到着。
ヘロヘロになりながらもまだ何とかいけそうか。
行ってらっしゃい〜と本栖湖方向へ向かううちの相方。

テクテクやって来るうちの相方。これから本栖湖を回らないといけないのか…と疲れ気味
テクテクやって来るうちの相方。これから本栖湖を回らないといけないのか…と疲れ気味

この後、本栖湖を1周してここへ戻って来るが、1時間半から2時間ぐらいかかるかな。
私はこの間どうしようかと思い、キョロキョロすると「散策路」と書かれた看板発見。
入っていくと、うっそうとした雑木林の中へと誘われていった。
そうか、この辺はかの青木ヶ原樹海だものね。
あまりに遠くへ行くと後が大変そうなので、腰掛けられそうなところを見つけて昼食に。
樹海といえど、それほど木が多くないので明るいところで一安心。

樹海というだけあって、もっと鬱蒼としているかと思ったらそうでもなかった。あまり遠くには行かなかったからこの先はどうだろうか
樹海というだけあって、もっと鬱蒼としているかと思ったらそうでもなかった。あまり遠くには行かなかったからこの先はどうだろうか

ムシャムシャと食べていると、電話が鳴る。
げっ、うちの相方のご両親(静岡県民)!
あれ、朝の電話では自由に応援する、という話だったのに、私に合流するの!?
急いで胃に詰め込んだのは言うまでもなし…。

5.流石に私も心配に…

ご両親と無事合流し、昼食を食べに行くと言うのを見送り、私は旧精進小学校で富士山を眺めながらノンビリ。
すっかり雲も取れ、富士山も綺麗な姿を見せるようになっていた。
小学校の桜も綺麗だねぇ。
ノンビリしていたら、そろそろうちの相方が来そうな頃。
GPSがエラー中だったものの、現状のペースで来そうなタイミングだったので、先ほど行った72km地点へ。
折り返しは90km地点になるここは、本栖湖方向から118kmの部のランナーが来るのはもちろん、本栖湖には行かない100kmの部の人たちが合流するところだった。
すでに相方のご両親も来ており、一緒に待つことに。
あまり喋らない私に色々話しかけてくれるご両親…いつもすみません…。
結局うちの相方がやってきたのは往路で通過してから2時間半後。
だいぶヘロヘロ感が漂っているが…走れるだけまだマシか。
給水所の精進小学校まで一緒に走る私。
もう足が痛いと言っていたが…こういう時に車にエアーサロンパスを忘れる私。ごめんよ〜。

精進小学校には二宮さんの像が。私の通っていた学校にはどこもなかったから、とても新鮮
精進小学校には二宮さんの像が。私の通っていた学校にはどこもなかったから、とても新鮮

相方および相方のご両親と別れ、再びバスに乗り、最初のポイントだった足和田出張所へ。
続々とランナーがここを通過していた。
ここは足切りの関門ではないが、ソコソコの時刻で通過できないと後が厳しいはず。
やってきたのは16時過ぎ。
残り14kmを3時間。
通常の相方なら何ら問題ないが、すでに100km超を走っており、未知の領域に突入している。
完走できると言い聞かせ、私は一足先にゴールの富士北麓公園へと戻るのだった。

6.私だって心配になるのさ

富士の夕景は美しく、バスから見える富士も、ゴールの富士北麓公園の陸上トラックから見える富士も、見事としか言いようがなかった。
なのに、なのに、私はうちの相方の様子が気になり、気もそぞろ。
というのも、110kmを中々通過する気配がなかったからだ。
うちの相方より後に出発した相方のお知り合いのほうが先に通過している状況。
大丈夫なのか!?
こんなに完走が心配になる大会は初めてだろう。
GPSも中々先に進まない。
もしや、リタイア!?

バスの中からの富士山も、
バスの中からの富士山も、
富士北麓公園のトラックから眺める富士山も美しかったんだけどね…
富士北麓公園のトラックから眺める富士山も美しかったんだけどね…

ようやくジワリとGPSが動き出したのは17時半過ぎ。
あと8kmを1時間半。
いつもなら大丈夫だろうが、この先の大半は高低差200mの登り坂。
こうなったらこちらは祈るしかない。
相方のお知り合いがゴールしたのは制限時間50分前。
そこからは居ても立っても居られず、ゴールから7,800m先の富士北麓公園入口で待つことにした。

薄暗い公園の入り口で、黒の革ジャンに黒いパンツと黒い帽子という目立たないこと請け合いの格好で待つ私。
ランナーのみなさんはすっかり疲れた表情の方が多いものの、もう少しでゴールということもあり、気力を振り絞り、向かっている人も多かった。
「もうすぐゴールです」「ナイスラン」「お疲れ様」「あと少し」と声をかける私。
嬉しいことに、多くのランナーの方が「ありがとう」と言ってくれたり、軽く手を上げてくれた。
こちらがその姿に勇気をもらっているのに。
なんてありがたいんだろう。

その間、うちの相方のGPSはジワジワ動き、何とかゴールできそうなところまで歩みを進めているところまで確認できた。
このペースなら何とか制限時間内にゴールできそうだ…。

7.ちょっと待った!?何その大どんでん返し

と思っていた制限時間15分前。
遠くからいい勢いで走って来るランナーが。
あれ?と思ったらよく見たことのある…。

うちの相方じゃん!

軽く手を上げていい勢い下って行く。
ちょ、ちょっと待ってよ、私の全速力より早いし!
その元気、どこで余っていたの!?というぐらいに飛ばしていくうちの相方。
あっという間に取り残される私。
でも何とかゴールの地点に〜と急いで追いかけた。
幸い、応援者向けルートはランナールートより短いので、何とかゴールで追いついたという…。
おかしいな、私何でここでぜぃはぁしているのか…。

ゴール時にはこんなに暗く!よく転ばずに走れたね…
ゴール時にはこんなに暗く!よく転ばずに走れたね…

結局、うちの相方は制限時間9分前にゴール。
これまでどの大会でもかなり早く走っていたので、こんなに制限時間ギリギリで走ることはなく、本人にとっても良い経験になっただろう。
終了後、学生ボランティアのマッサージで癒され、だいぶ楽になったようで。
我々は宿泊もせず、足柄サービスエリアのスーパー銭湯につかり、仮眠を取って夜中の2時過ぎに自宅に着いたのだった。

私にとっても心臓に悪い1日だったが、何とか応援もでき、充実した1日となったなぁ。

8.うちの相方、次はこれを目指します

うちの相方は完走後、
・タイムを競う(フルマラソンを超える)長距離大会はいいかな(京都・丹後ウルトラマラソン100kmの部は出るけど)
・今後は走って道の駅を巡る人になるよ
と申しておりました。
車で道の駅を巡る人はたくさんいるけど、自分の足で走って巡る人はそういないだろうからね。
たぶん本人にとってもそちらのほうが楽しく走れるでしょう。
応援してあげてください〜!!

私にとっては春の遠足的な感じ?ドキドキしたが、貴重な経験となりました
私にとっては春の遠足的な感じ?ドキドキしたが、貴重な経験となりました

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